なんか書くことねえ。
ライフハッカーの編集さんからプロフィールを載せるから書いてくださいと言われて、すぐ書こうと思いつつ、なんかちょっとは面白い感じにしようとか思ってたら一ヶ月くらいたっちゃって、完全にタイミングを失って、もう先方も怒ってるかもしれないし、「あれ、いまごろですか?」と言われるのも恐れで、書けなくなってしまった、わずか数行のプロフィールが、である。
でも、プロフィールって僕にとって鬼門で、つまり、たいていの場合、場違いな思いをするのです。以前、哲学サークルの仲間で雑誌を創刊する相談をしているとき、編集長から、簡単なプロフィールを書いてくれ、と言われて、一応哲学の雑誌の編集部員ということだから、哲学に関係あることを中心に書いてくれと言われて、よく考えると、いや、考えるまでもなく哲学的経歴などゼロなので、ゼロです、と言うと、ほんとだね、と笑われた。そして、あなたの場合、そうだな、エサレン研究所(精神世界のメッカみたいな場所)に行ったことがあるぐらいしかアピールポイントがないね、と断言され、さもエサレン研究所という何か大学みたいな研究機関に留学していたかのようなプロフィールを書いたことを思い出していた。実際、エサレンはどちらかというと保養所みたいなもんであり、いた期間も3か月くらいのものなのだが。
関係ないことばっかりやろうとしている自分がいる。いつでも困る。履歴書を書くときいつでも困るのです。履歴書なんてもう書くこともないと思いますが、ないことを切に願いますが、あんたいったい何ができる人?と問われることほど恐怖なことはないのです。
まあいいとして、表題の件を書くと、あれは半年ほど前だろうか、バリ島で、こいつは本物!と思えるアーティストに出会ったのです。それは海でした。ビーチで、いつものようにサーフィンがてら海を眺めていると、となりに初めてみる顔がいました。どうやらバリ人のようです。髪の毛ぼさぼさで紙になにやらぐちゃぐちゃと記号のようなものを書いています。なんか危ない人かなー、と思ってなるべく視線を合わせないようにしていたのですが、なんとなく声をかけられたかかけたかして話はじめることになりました。
で、それ何書いてるの?と聞くと、計算しているんだよ、と言うのです。よくみると、筆算みたいなことをいっぱい書かれている。大人のくせに2桁と2桁の筆算かよ、と思う。98x55みたいなかけ算を一生懸命やってるのです。バカな子かな、と思っていると、「ゼンブキュウ」と日本語で言いました。
まあぐっとはしょって言うと、かけ算の独自の解法を編み出したとかで、どんな数字同士のかけ算でも9をうまく使うとあっと言う間に答えが出るそうなのです。で、試しに3桁x3桁とかの複雑な計算をさせてみると、あっと言う間に答えを書いてしまいます。携帯に計算機で確かめるとあっています。あれ?なんでそんな速く解けるの?ということで、ほかにもいろいろ出題しましたが、あっと言う間に、つまり3秒くらいで解いてしまいます。あれ、天才?
これは「わたしの型」なのだと言います。見つけたのだと。そのほかにも、初めてきく数学の法則をいくつか教えてくれました。自分で考えたとのこと。あーこういうやつが天才と言うんだな、とぼくはちょっとヤラレタ気分でいたところ、こんどは、絵を見る?と言ってきます。なになに?というと、携帯で写真を見せてきます。めっちゃうまい感じで像とかアフリカの民族とか、カラフルにしかもセンスよく描かれています。あんた描いたの?と聞くとそうだと言います。
おいおい、絵まで描けるのかよ、と驚愕していると、これ、面白いよ、といってまた別の絵を見せてきます。なにやら不思議な筆跡で肖像画みたいなのが描かれています。不思議な絵だなーと思っていると、これ、髪の毛、と言います。???なんだろうと思っていると、なんと自分の髪の毛を紙の上に散らして描いてあるとのこと。おまえ、それすごいじゃんか、クリエイティブすぐるじゃんか!ということで、ここらへんにくると僕も態度がすっかりかわっています。
さっきまで、この怪しい兄ちゃんとは口きかんとこ、と思っていたのに、今は、このお方はすごいお方だ、もっと話を聞きたい、となっていたのです。そして、ふと目がとまると、彼のはいているビーチサンダルが不思議な形をしています。土踏まずのところがぐぐっとせりあがっているのです。立体なのです。なんだこれ?新型のサンダル?と思ってきくと、自分でつくった、と言うのです。このほうが人体にとって自然な形なのだと。なんでも、木の樹液を固めてつくったそうです。おいおい、こいつおかしいよ、やばいよ。
ああ、と理解できた気持ちがしました。この人はアーチストなんだ、と。これが本物なのだ、と。
本物のアーチストはぜんぶおかしいのです。絵がうまいだけとか、そういうんじゃなくて、もう存在自体がおかしい。そして、何かこいつから学ぶべきことがある、と思わせるそんな存在です。
で、この記事の教訓は、すごいアーチストがいたよ、ということではありません。教訓は、こうです。早く見せろよ、です。おまえ早く絵とか見せろよ、って。あやうくただの怪しいやつで済ますところだったじゃないか、ということです。おまえ、ビーチで汚い格好できたないノートに汚い字でかけ算みたいなのずっと書いてたら、おまえ声なんてかけられないだろう、ということです。もっとアーチストらしくしとけよ、と。ボブマーリのTシャツくらい着とけよ、おしゃれにしとけよ、ということです。
俺の目は節穴なんだから、という反省と、あ、やっぱり他人のことって一目ではわからないから、説明するのって大事なんだね、ということです。なにもアーチストに限りません。自分がどんな人間であるか、初対面の人はぜんぜんわかってない可能が本当にあるんだな、というなんか恐ろしい実感がふーーっとやってきたのです。
おれだってどう見られてるかわかったもんじゃないな、油断してたな、という。でも何をどうすればいいかわからないんだけどね。こぎれいにはしておかないとね。
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