12/29/2011

キッチンがあった

最近、いままで見えていなかった事実がつぎつぎと明るみに出ている。
おれはいったい何を見ていたんだ、と不可思議な気持ちになる。

たとえば
ぼくはこっちにきて1ヶ月目くらいのときに、三井住友銀行の国際キャッシュカードを紛失してしまいました。いつもこのカードで現地のATMから預金を引き出していたのです。1回数百円の手数料だけで利用できて、便利でした。ところがこれをたぶんどこかのATMに置き去りにしてしまいました。
もちろん即座にネットからカードの利用停止処置をして、被害は免れたのですが、預金がおろせなくなりとても不便です。
一応、Skypeで日本の三井住友銀行に電話をかけて、紛失したのでカードを再発行してほしいと言ったところ、本人が店に来ないとだめだ、の一点張り。家族の代理とか、郵送で、とかだめですか?といっても、だめだ、の一点張り。そして、気にしてくれるのはカードを利用停止にしましたか、ということだけ。一応、ネットからやったよ、と言っても、念のためこちらでも利用停止処置をとらせていただきますね、という。
まあ念を入れてくれるのはありがたいんだけど、おれが今必要なのはカードの再発行なんだけど・・・
そっちは、少しも一緒に頭を悩ませてくれることなく、できかねます、の一点張り。
これが三井住友クオリティーなのか、と諦める。まあ、客の利便性はどうでもいい、とにかく問題発生のリスクだけは最低限にする、ということだね、君たちは。いずれ解約してやるからな!

そして、しぶしぶクレジットカードで現金をおろす日々。
そして、今日ふと明細をみたら、年利18%もとられとる!しかも手数料が1回420円?!高い。
こんなことを2ヶ月もやっていたなんて・・しかもこれから他にお金をおろす方法のめどはたたない。

あらーーと思っていたら、そういえば、おれ、もう1枚キャッシュカード持ってるじゃん、と気づく。
念のため、新生銀行の口座を作ってきたのだった。こっちが現地のATMで使えるかまだ試してなかった。
たしか、住友のカードを紛失したときも、思いついたはずなのだが、すっかり忘れていた。
で、試しに行ってみたところ、無事使えました。ほ。あとはネットバンキングで三井住友の口座から新生銀行の口座に振込すれば、預金を引き出せるようになるということだ。なんだ、できるんだったらなんでもっと早く試さなかったんだろう・・・

これは本当に感慨深いものがありました。
だって、クレジットカードで現金をおろすたびに、このままではいかんなー、なんとかしなくちゃいかんなーといつもイライラと焦る気持ちになっていたのです。そして、新生銀行のカードがあることはいつだって覚えていたのです。なのに、新生銀行カードを試しにいくことが思いつかなかった。なぜだ。
焦りの大きさのわりに、新生銀行を試す手間などはないに等しい。歩いていけるATMにカードをつっこんでみるだけだ。そのつっこんでみるだけ、が2ヶ月間もできなかった。具体的行動プランとして頭に浮かばなかった。カードの存在は知っていたのに。

どういうことなんでしょうか。
たぶんぼくは、この3ヶ月間、軽いパニック状態にあったのだと思います。
やはり環境の急激な変化、ショックを受けていたはずです。
頭のなかもかたときも冷静ではなかった。軽い思考停止状態が続いていたのだと思います。

こんなシンプルで何のリスクもない選択肢が行動に移せなかったなんて。

で、懸念だったキャッシュカード問題にかたがついて、あーなんか肩の荷が降りた〜とほっとしていたここ数日だったのですが、そして、今日、サーフィンに行けないので近所を散歩することにして、いつものビーチと逆の方向のビーチに歩いていってみました。

そしたら、そこは素晴らしいリゾートが広がっていたのですW
徒歩5分の圏内です。徒歩5分にこのような風景が広がっていることに、ここに引っ越してから2ヶ月間、まるで気づいていなかった。ばかじゃないのか。なにをやっていたのか。
そして、歩きながら思っていました。
ぼくはここサヌールという街がどこか嫌いになっていました。
さみしすぎるのです。歩いているのは高齢者ばかり。若者も日本人もみかけません。
これでは友達ができないじゃないか!ぼくがさみしいのは街が悪いんだ、この街がすべていけないんだ!と。

でも、今日散歩していて、ああ、のどかでいいな、って素朴に思っている自分がいました。
こんなにきれいなリゾートなのに、観光客でごったがえしていない。少しさびれたここサヌールだからこの雰囲気が味わえるのです。
今をときめくクタエリアならば、人の波をかき分けてビーチを歩く、という感じになっているでしょう。

なんだ、こんな近くにこんな好条件のビーチリゾートが会ったなんて・・
なにをやっていたんだ、おれは。もったいないじゃないか。
そんな気持ちで痛めた股関節をかばいながらとぼとぼと歩き、よさげなカフェに陣取り、海をながめていました。

気がつけば、超いい波が沖の方でブレイクしています。いまのぼくではあの距離までパドリングしていくことはできませんが、うまそうな人たちはみんなパドリングしていっていました。
そして、グッドウェーブを少人数(わずか3人とか)で堪能して、満足顔で返ってきているのを眺めていました。
おれ、もしかしてなんかすげーいいとこに居る?

そんなことを呆然と考えながら、いったいこの3ヶ月はなんだったんだろうか、と頭をひねっていたのでした。

そして、今晩、夜になって、あることに気づいて驚愕しました。
うちのアパート、キッチンがないのが玉にきずだね、とずっと思っていました。
長期滞在なら、やはり自炊したいじゃないですか。ソバとか食べたいじゃないですか。でも部屋にキッチンがついてないんです。これじゃあイタリアンコーヒーもいれれない。

ところが、今日、アパートの1Fに、共同キッチンがあることを発見したのです。
というのも、ぼくのとなりに住むドイツ人のギャルが見慣れない部屋に入っていくので、何やってんのかな?と思って見ていると、なんと、そこにキッチンがあったのです!

このドイツギャル、このアパートにきてまだ2週間くらいです。その人が普通に知っているのに、なぜぼくは気づかなかったのか!キッチンがあれば、キッチンがあればと嘆いていたのに。
管理人に共同キッチンとかないの?と聞いてみることさえしなかった。というか、だまって探してみることさえしなかった。まったく人の家にいくとすぐ探検したくなる僕らしくないことです。

なにをやっていたのか。。ほんとに。
何も見ていなかった。ほしいものがそこにあるのに、できることがすぐあったのに、できない、ない、と思い込み、周囲を見渡してみることがなかった。そのくせ気ばかりあせって他の地域のアパートを必死に見に行ったり、探索しにいったりしていい物件がないないないと疲れたりしていたのです。

まず身の回りに何があるかを確かめもせずに。
そう、ぼくは軽いパニック状態だったのです。

なんか急に、生活を楽しもう、という気持ちがむくむくと湧いてきました。
どんな理由にせよせっかく海の近くに住んでいるのです。憧れの海近の家に住んでいるのです。
徒歩五分で海なのです。なぜそれを楽しもうとしてこなかったのか。足りない、ない、と嘆いてばかりいたのか。そんな反省がやってきました。

そしてたぶん、それは、いまこのアパートで友達ができはじめ、一緒に波乗りに行ける人もできて、さみしいという感情がどんどん減ってきたからこそなのかもしれません。

とにかく、なんかおかしなモードの時期をやっと過ぎたな、という気持ちで海からの風に吹かれていたのでした。

アパートを出て海に向かう道。真ん中にかすかに見えるブルーが海です。

5分歩けばこのようなビーチが広がっていました。知らなかった。

こんな空があった

このカフェに陣取り、長いこと海を眺めていました。あとで友達もやってきてお話しました。
そうそしてこう思ったのでした。作戦を練ろうよ!って。
このような場所に数名で集って、作戦を練ろうよ、って。自分はどうやって生きて行くか、日本をどうするか、どうやったら楽しく暮らせるか、作戦をね、練ろうよね、って。

PS
決して自慢してるんじゃないからね、本当に今日はいつになく風景が美しく見えたのです。明日はわかりません。でもいつでも遊びにきてね。一緒にマンゴージュースを飲みましょう。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

とてもステキな海で、とてもステキなエピソードだった。
よい一年を送れそうだね。

あけましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いします。

でび

Unknown さんのコメント...

あけましておめでとう!
そう、いい海があったのです。まあ楽しんでやってみるよ!