10/19/2012

書評:「白鯨」(メルヴィル)



ついに、あの大著にして古典中の古典、「白鯨」を読破した。一年くらいかかった。もちろん休み休みだ。文庫本で上中下の3冊セットで出ている。長かった。。

ふつつかにもこの大御所中の大御所を書評してみようと思う。

まずね、おれはね、冒頭らへんの一節にしびれたね。
この通りじゃないけどだいたいで言うと、主人公が捕鯨船に乗ろうと思ったきっかけを語るくだりはこんな感じだ、
「少し陸の生活にも飽きたので、ひとつ水の世界でも見物してやろうと思いたち、」

水の世界を見物ですか〜。なんかかっこいいじゃないですか!

もちろんこれは翻訳文なので、翻訳者の言語センスがかっこいいだけかもしれないが、たぶん原文もこんなニュアンスで書かれていたのでしょう。

それから主人公は、全身刺青の蛮族出身の銛打ちと宿をともにして、片足の怒れる老人が船長を務める捕鯨船に乗り込んでいく。あとはえんえんとクジラの知識と捕鯨の知識と、捕鯨の日々がたんたんと何の感情移入もなくつづられていく。

ある意味めちゃくちゃ退屈でもあった。だから読むのに一年もかかっちゃった。

途中途中、冒険活劇として面白く読める箇所がインサートされるが、それが終わればまたクジラの話。ザトウ鯨の骨はどうだの、マッコウ鯨の潮吹きはどんな形だのの話がずーーーと続いたりする。鯨好きにはたまらないかもしれないが、ぼくはどちらかというと象が好きなのだ。

まあいいだろう、そして最後もかっこいい。すごくかっこいい。最後は、捕鯨船一丸となっての宿敵白鯨との格闘劇だ。捕鯨船から三艘のボートがおろされ白鯨を追跡する。途中、白鯨との格闘で、ひとりの船乗りが海に放り出されてしまう。ボートはかまわず鯨を追いかける。そして、なんとボートは3つとも白鯨によって破壊されてしまう。それどころが、捕鯨船本船までも、白鯨の体当たりによって穴をあけられ沈没する。船乗り達は全員、船とともにその渦に巻き込まれて沈んでいく。

ただひとり、さきほどボートから海に投げ出されてしまった船乗りだけが、その渦に巻き込まれずに助かり、近くを通りかかったほかの船に救出される。その投げ出された船乗りが主人公というわけなのだった。

最後、そこまでが一気に語られ、なんの感慨も感想も感傷もなく、物語はとつぜん終幕する。このいさぎよさ。歯切れよさ。なんだかとにかくかっこいいのです。

こんなかっこ良い系の小説だとは思いもよりませんでした。なまえの「白鯨」といい、復讐心に燃える老いた船長を中心に話は展開するし、もっと教条的でこころに染み渡るような話だと勝手に思っていたのです。なにも染み渡りません。ひたすらにカラッと晴れ上がった空と、船ひとつ見えない大海原が残されただけでした。そしてはるか遠くの方に白い点のようなものがかすかに見えるだけ、そうそれはかの白鯨かもしれません。

なんか男の小説を読んだな。そんな感想です。
 男なんてこんな風に生きて死ぬってことでいいんじゃないか、とほんのチラッとだけよぎったり。とにかく僕の個人的な性格とはかけはなれたムードをもった骨太でカラッと晴れ上がった小説でしたね。

まあ、そんなところでね。


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