3/08/2012

勝ちたいんです



どうでもいいことシリーズ

かつて、とはいってもそれほど昔じゃない以前、AKB48にめちゃくちゃ詳しくなったことがある。あれはそうだ、前の仕事を辞め、でもそこから何をいたらいいか皆目わからん、という日々が続いていたときだ。そういうときはネットにはまるものだ。夜な夜なネットをしていたら、YoutubeでAKBのひとりひとりをドキュメンタリーで追ったような動画をみつけた。まだそのころは、AKBといえども2人くらいの名前しか知らず、ネタとしては口にすれど、なにを大騒ぎしてるのかよくわからん、といった感じだった。ところが、あまりに時間を持て余し、見れるだけの動画を見つくし、かといって映画を借りてきても見通す集中力がなく、とにかく時間を塗りつぶせるものを探していたとき、そのようなときにAKBに出会ったのだ。

そして、なにげなくそのドキュメンタリーっぽい動画を見始めた。1本みるとだいたいその子の人となりがわかるような動画だった。いろんな子がいるんだねー。いつのまにそれなりにはまっていた。僕がその動画をあるだけ見た。つまり、40本くらい見たのだろうか。30本だろうか、とにかくYoutubeにあるだけ見た。それもわずか3日間くらいで見た。もう専門家になっていた。顔と名前が一致する子が50人ほどになっていた。

そして、とある1本の動画を見ている時だ。
そうだ、そのドキュメンタリーというのはじゃんけん大会を追った動画だった。そこで、あるメンバーの子が、このじゃんけんにはどうしても勝ちたいのだ、としゃべっているのを見ていた。その子はこんなことを言っていた。わたし、○○ちゃんとは学校の同級せいなんです、でもいつも○○ちゃんは仕事で忙しくて学校にいないのに、私はあんまり仕事がなくて学校にいたんです。同級生達に今日は仕事の日じゃないのー?○○ちゃん今日もいないよねー、と言われるのが悔しかった、と。
私、悔しかったんです。毎日。でもどうにもならなかった。だから、今日、私、じゃんけん、どうしても勝ちたいんです。○○に勝ちたいんです。

と言いきっていた。
僕はこれを見たとき、なぜか、感動した。
「わたし、どうしても○○に勝ちたいんです」

それを聞いて、おおーーと思った。いいね〜。なんだか、いいね〜。涙すらでる気がした。

それはある側面では、負け惜しみ的な闘争心であり、行き過ぎた負けず嫌いであり、所詮は目立ちたい、人気者になりたい、というある種いやしい欲望の発露であるように見えた。
しかし、一方では、すごく純粋な感情の吐露、ストレートな情熱、ゆがんでいない競争心、澄み切った欲望といったものにも感じられた。若干、いやけっこううらやましい気持ちになった。その欲望はさわやかですらあったのだ。

ああ、この子はほんとうに、クラスメイトに勝ちたいんだな。一度でいいから勝ってみたい。そういう地点にいるのだな。そしてそれを、今ここで悪びれずに表現している。


おっとと、AKBの事をこんなに書くのはいやだった。このブログは女性も読んでいる。どう思われるかわかったもんじゃない。だから、これで最後になると思うし、でも、その「私、勝ちたいんです」というあのシーンが脳裏を巡るので、これは何かあると思って筆をとることにしたのだ。

そして言い訳のようになるが、日本を出てバリ島に来た瞬間から、AKBに全く興味を失ってしまった。あれは、日本という現象の中に起きていた何かだったのだろう。というか、日本の芸能界全体にみじんも興味がなくなった。これは面白い発見だった。

逆に、政治や経済には興味が湧いてきて、ニュースをチェックするようになった。それが外国に出るひとつの作用なのかもしれない。

ちょっと戻ると、わたし、○○に勝ちたいんです。この台詞、おれも言ってみたいな。誰かに勝ちたいって心の底から言ってみたいな、なんか。大人になるにつれて、誰かに勝ちたいって言わなくなってきた気がするし、どこか言っちゃいけなくなった気がする。でも、そういう純粋な嫉妬みたいなものを、パッと花開かしてみたいな、とおも思ったのだよ、ということを書いて、とりあえず記憶の中のAKBには成仏してもらうことにする。

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