1/06/2012

待ったら生まれた

忘れないうちに書いておこう。
紹介したい話があるのです。

これはぼくの書くものによく登場する吉福伸逸さんが言っていたのだが、
たしか実話だと言っていたと思いますが、
少し前、それほど昔じゃない時代に、とある南の孤島では出産に関して独自の風習があったそうです。
それは、ここからは少しエグい映像を喚起させてしまう描写になるので、妊婦さんや女子は読まないほうがいいかもしれません。気分がいいときに読みましょう。

そのとある南の島では、妊婦が臨月になると、竹でお腹をさいて赤ちゃんを取り出す慣習があったそうです。いわば超強引な帝王切開です。当然、母親は死んでしまいます。赤ちゃんは村人で育てるということです。そんな風習がずっとつづいていた村があったそうです。

ところが、ある男が、つまり父親になる予定のある男が、妻が死ぬのはいやだ、忍びない、と、妊娠した奥さんを連れて村から逃げたそうです。そして、どんどんふくらむ妻のお腹を見ながらもどうしようもなくそのままにしていた。そしたら、赤ん坊が生まれた。

男は驚き狂喜乱舞し、妻と赤子をつれて村に報告した。それ以降、その村では自然分娩をするようになったそうです。もう母親は死ななくてよくなったのです。

馬鹿みたいな話ですが、たしか実話だったと思います。

ぼくはこの話が好きです。

妻が死ぬことが忍びず、逃げて待っていたら生まれた。そういう話です。

もちろん、妻も赤ちゃんも死んでしまうという可能性も男の頭にはつきまとったことでしょう。でも待った。それ以外にできることがなかっただけかもしれないが、待った。待ったら生まれた。

待ったら生まれたのです。

1 件のコメント:

ばなな さんのコメント...

遡って読んでここまできたけど
今までの記事で一番きた、なんかがきた。

イイネ!